オノマトペでロボット開発

オノマトペとはフランス語で、擬声語、擬音語、擬態語と訳されていますが、自然界の音や声、動きを音(おん)で象徴的に表した語です。

“ゆらゆら揺れる”や“クスクス笑う”や“シクシク泣く”などの表現で、日本語オノマトペ辞典には4.500語も記載されています。赤ちゃんが発する“ワンワン”や “アブアブ”などもオノマトペですが、こんな簡単な言葉を使って「生活支援ロボット」の研究開発が進められています。“ザラザラ”などの感触を表す言葉は、外国の赤ちゃんでも認識することができるのだそうです。マンガの世界では一歩先を行くオノマトペですが、世界共通の言語になるのでしょう。少子高齢化が進むなか、家での生活をサポートしたり簡単なコミュニケーションや赤ちゃんでも動かせるロボットの開発が進んでいます。

当社でも無声だった産業ロボットに音声を組み合わせ、誰でも認識できる作業の標準化や安全管理に力を入れています。

想い出の雨傘と技術革新

亜熱のような天候で突然の豪雨にあわててコンビニへ飛び込み500円のビニール傘に、お世話になっています。突風やゲリラ豪雨で、気が付くと傘の技術革新も進んでいます。

日本郵便が販売する“折れてもOKの傘”は骨のつなぎ目を工夫し特許構造で、たたんで開くと元通りになるのです。傘メーカーのサエラの傘は、風に強い構造が特徴ですべてのパーツが強度と弾力性に優れたプラスチック製で、風速32mの風でもしなやかに曲がって受け流し、風がやめば元の形に戻ります。

傘の技術革新の一方、売った傘は永久に保証しお直しする平塚の「こばり」店では親子二代が無料でお直しし、40年以上も修理して使っている常連客もあるそうです。

1964年、第14回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したフランスのミュージカル映画、「シェルブールの雨傘」を思い出しています。

せつない恋物語ですが、雨傘の夢と技術革新が妙に交叉します。

オニヒトデ駆除ロボット出陣!

地球温暖化は世界各地で様々な問題を提起していますが、科学の知恵を集結する時代なのかもしれません。温暖化が海水温を高め、サンゴ礁を食い荒らすオニヒトデが繁殖し白化現象の被害が広がり生態系が脅かされています。沖縄では年平均約10万匹のオニヒトデを駆除していますが、ダイバーが1匹ずつ駆除するのではとても間に合わずその上、捕まえる時や陸に揚げるときに猛毒のトゲに刺される事故も起きています。

豪州のクイーンズランド工科大学ではオニヒトデを退治する潜水ロボット「COTSBOT」コッツボットを開発しオニヒトデを自動検出し、致死量の胆汁酸を注射して駆除する実証試験を始め99%の制度でオニヒトデを検出し成果を出しているそうです。世界最大のサンゴ礁、グレートバリアリーフの減少の40%がオニヒトデが原因と言われていますから、オニヒトデ駆除ロボットの活躍が期待されています。

*COTSはオニヒトデの英名の略

『“軟らかいロボット”への挑戦』

“軟らかいロボット”-という新分野のソフトロボットが注目を集めています。

現在、活躍している均質な製品や部品の大量生産に対応し同じ作業をいち早くこなす硬いロボットアームに対し、卵をつかんだりトマトを収穫したりする人の手のような作業をするロボットの活躍が期待されています。

軟らかいモノを挟んでつかむ「バインド式アーム」や、人の動きを支援する「パワースーツ」、違和感が少なく装置できる「人工筋肉」と呼ばれるスーツも活躍しています。先端にカメラを取り付け、障害物に当たっても壊れず、対象を傷つけない「風船型アームロボ」が建物内の配管を撮影したり、医療現場での活用も期待されています。

「機械工学だけでなく、素材や電子制御、バイオの研究者が集まり“ソフトロボティクス”を発展させたい」と語られています。

当社も時代の要請と“ほどよい加減”のソフトロボ技術の発展に挑戦してまいります。

人工衛星でIT漁業

蒲田は「下町ロケット」のモデル工場の町で、当社も含め精密機械の製造工場が多い町です。今、地球観測ができる小型人工衛星の商業利用に注目が集まっています。

こうした人工衛星で潮流や漁場分析をして、効率よい操業をするだけでなく漁業資源の保護にも取り組む「スマート漁業」で成功している町があります。

北大北極域研究センターが06年に開発した「トレダス」は、人工衛星でプランクトンの量や潮の流れ、海水温を計測し、過去の漁場データと合わせ魚がいる場所を予測し、衛星通信で情報を遠洋漁船に配信し効率の良い漁を推進しています。稚内市の宗谷漁港では北海道立総合研究機構と北海道大低温科学研究所が09年に開発した短波レーダーによる潮流観測と過去のデータを参照して、1日の平均的な潮流の向きと速さを1年先まで知らせる潮流カレンダーでミズダコの「たる流し漁」生産額全国トップのIT漁業で注目されています。

考古学で活躍するロボット

琵琶湖の底、水深60mに眠る「葛籠尾崎(つづらおさき)湖底遺跡」の調査がロボットを使って立命館大学びわこ、くさつキャンパスで進められています。ダイバーが水流が強い深い湖底で調査するのは危険で、低価格で水深100mまで観察でき、考古学者が一人で操縦できる小型軽量ロボットの開発が進んでいます。

なぜこんな深い場所に約1万年前から11世紀までの土器があるのか、なぞの多い遺跡です。

誰がこんな深い所に土器を捨てたのか、それとも儀式だったのか、船が転覆したのか、地震で集落が沈んだのかと謎はつきません。

今や考古学には科学技術は欠かせませんが、この湖底遺跡の調査では考古学を中心にロボット工学や文学部、自然科学、芸術学科も加わって、人間はどう生きてきたのか、土器についた小さな種の成分や植物学と幅広い課題から共同研究が進められています。人間の歴史の解明に文系と理系が連携する時代、当社もこんな技術開発に挑戦していきます。

ドラえもんの秘密道具、実用化!

27年前に上映された30年後の世界にタイムスリップしたSF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で登場した夢の未来技術のほとんどが実現したお話を前にお伝えしましたが、いま、漫画「ドラえもん」の秘密道具が実用化に向けて開発されています。

秘密道具のほしいものランキングの1位は「どこでもドア」で、2位は「タイムマシン」、3位の「タケコプター」は「ドローン」でしょうか。そして4位の「ほんやくコンニャク」が開発されています。鎌田の世界の玄関口、羽田国際線のターミナル駅や東京メトロの改札口などで、しゃべった言葉がその場でほかの言語に翻訳される、ドラえもんの「ほんやくコンニャク」が“音声自動翻訳システム”として2020年の東京五輪に向けて、官民で本格的な取り組みが進んでいます。

“食べるだけで外国語が話せる”とはいきませんが、科学の日進月歩に私たちも励まされます。

「スマート工場」を売る!

浄水器や排水処理装置の荏原製作所が機械や装置を売るのではなく、排水を綺麗にして流すシステムを提供する“モノからコトを請け負うサービス化”に転換しています。お客の悩みや不安を解決するために、工場内の設備や制御システムをIoTで結び集めたデータを使って生産効率を高める、モノづくりの生産ラインと管理システムを一括して売る「スマート工場」の販売が始まりました。

少量多品種の製品の生産を自動で調整できるよう、1つのラインにメーカーや工程が異なる機械が組み込まれていても、1台のパソコンで一括して管理できる方式で、切り替えにかかる時間が3分の1に短縮し、生産性を3割程度上げられるというシステムです。

工場の大小ではなくAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)化で新しい 「スマート工場」とし、サービスの経済化が急速に進んでいます。我が社もお客さまの悩み解決に取り組んでまいります。

時代を変える「IoT」

IoT(Internet of Things)  全ての“モノ”がインターネットにつながる時代が急速に始まっています。
これまでの家電見本市が中韓勢に主役を奪われ、今年はIoT総合展シーテックとして衣替えしました。家電業界はハードウエアだけでは成長が難しく、機能の体験やサービスを含めた価値を提供する“モノとコト”の融合として、環境や農業、交通や観光、気象や位置情報、教育などのあらゆる分野で、“モノ”に通信機能を持たせる新しいシステムとして、機器をインターネットにつなげる技術革新がドイツやアメリカが先行して進んでいます。
日本でも2400社の企業が参加してIoT推進コンソーシアムを日米独の3か国主導で始まっています。
IoT化はいろいろな“モノ”づくりに新しい変革をもたらします。私たちの会社も新しい時代に対応した技術革新に取り組んでいます。ご期待ください。

今年の機械遺産と技術遺産

歴史的に技術面で意義のある機械と科学技術の歴史や生活に大きな影響を与えた製品が、機械遺産と技術遺産として選ばれました。
今年10回目の機械遺産は、日本機械学会が「機械の日」に認定したのが富士重工業が1958年に販売した軽自動車スバル360、愛称「てんとう虫」など7件で、他に66年に商用地熱発電所として初めて運転を始めた岩手県の松川地熱発電所が選ばれています。
国立科学博物館が新たに登録したのは、ライオンが1999年に製造を始めた生活排水による環境汚染や洗浄効果と安全性を向上させた酵素パワーの合成洗剤「トップ」など16件が登録されました。
当社でも機械油に汚れた手を肌に優しく汚れを落とすとして開発された石鹸「クオリオ」がありますが、機械や技術の発展はいつも“必要の母”から生れるのですね。