食卓を守る「優しい手」―ソフトロボティクス

9月を迎え、店先に新米やぶどうといった旬の味覚が並ぶ「実りの秋」がやってきました。そんな豊かな食卓の裏側で、いま「ソフトロボティクス」と呼ばれる新しいロボット技術が注目を集めています。

従来の産業用ロボットは、金属製の硬い手(ハンド)で決まった形状の部品を正確に掴むのが得意でした。しかし、大きさも形もやわらかさも一定ではない食品は、力加減が難しく、つぶれたり傷ついたりしてしまうため、長らくロボットによる自動化が難しい分野とされてきました。

その常識を大きく変えつつあるのが、ゴムやシリコンなどの柔軟な素材と空気圧を活用したソフトロボティクス技術です。まるで人の手のように、対象物の形にあわせて指先が柔軟に変形し、絶妙な力加減で優しく包み込むように掴むことができます。

たとえば、弁当・惣菜の製造現場では、形も柔らかさもさまざまなおかずを崩さずにお弁当箱へ丁寧に盛り付ける作業への導入が進んでいます。またイチゴやトマトといった傷つきやすい果実の収穫現場でも、AIによる熟度判定とソフトロボティクスを組み合わせた自動化が広がりつつあり、農業から食品加工まで、その活躍の場はますます広がっています。

長年、人の手作業に頼らざるを得なかった繊細なラインにおいて、ソフトロボティクスは労働環境の改善と高度な衛生管理の両立を可能にしています。

「相手を思いやり、優しく触れる」という人の温もりや繊細さを、日本のものづくりは最先端の技術で再現しています。私たちの豊かな食生活を陰で支えるこの柔らかいテクノロジーには、これからの時代に必要な人と機械の優しい共存の姿が詰まっています。
私たちも技術の可能性に学びながら、人に寄り添う確かなものづくりをこれからも追求してまいります。