科学立国は「リケジョ」から

“リケジョ” 理工系女子と呼ばれて話題になりましたが、どうやら科学技術立国ニッポンの復活の鍵は女子中高生にあるようです。
現在のIT技術者に占める女性の割合は13%程で、内閣府も女性の研究者の割合が米国の半分以下だとして力を入れています。
特に女性が少ない分野は科学、技術、工学、数学で英語の頭文字から「STEM(ステム)」と呼ばれ、日本は他国と比べてステムの分野に進む人の男女比に不均衡があると指摘されています。そこで、女子学生が理工系の職場見学や仕事体験をする「理工チャレンジ」の実施や、筑波大学の2泊3日の「リケジョサイエンス合宿」が開催され、中高生約100人が参加したり、東京理科大でも「科学のマドンナ」と題して理系出身者を招いての講演会などを開いています。リケジョのノーベル受賞者も夢ではなさそうです。

技術進歩と机の下開発魂

ソニー用語に「机の下開発」という言葉があるそうです。有志の技術者たちが空き時間を使って試作機器や得意の技術を伸ばす技術開発のことで、12年前に生産終了したソニーのイヌ型ロボット「aibo」を復活させ、戌年の今年1月に発売、ブームになっています。

ホンダの発明大会も技術者魂に挑戦するコンテストで話題ですが、我が社にも「机の下開発魂」があり、世に送り出した製品もあります。作業の油汚れ洗浄から生れた石鹸「クオリオ」や爪をやさしく研ぐ「爪みがき」等です。

一時はロボット開発から撤退したソニーですが、技術者は終了後も画像や音声認識、力を制御する技術を密かに研き、いま生かせる技術を総動員してAI搭載の2代目「aibo」で“ロボットで人々の生活をより刺激的に、豊かにしたい。アイボの復活は我々の挑戦のスタートにすぎない”と語っています。成長とは変革の大切さですね。

進化する素粒子研究の地「スーパーカミオカンデ」

岐阜県飛騨市は、我が社の渡辺創業社長の故郷で飛騨工場もある地です。

2015年に東京大宇宙線研究所の梶田隆章所長がノーベル物理学賞を受賞して有名になった、素粒子ニュートリノの観測装置「スーパーカミオカンデ」で注目されました。飛騨市の旧神岡鉱山の地下にある鉱道を活用した施設で、研究チームが新たに、はるか遠くの宇宙で起きた超新星爆発から放出された反電子ニュートリノの新しい観測装置の開発に取り組んでいます。装置の感度を上げるため、レアアースのカドリニウムを水槽内の水に0.1%混ぜることで飛来したニュートリノを観測する計画で、2019年度にも稼働させるそうです。

銀河系のはるかかなたから来る素粒子を正確に観測できれば、超新星爆発の歴史を解明し宇宙だけではなく、物質の成り立ちの解明にもつながると期待されています。

この世界初の研究も次のノーベル賞に輝く、飛騨の誇りに思えてなりません。

“なぜ”が科学技術発展の芽!

世界で活躍する科学者や技術者をめざす高校生が研究成果を競う「第15回高校生科学技術チャレンジ」の発表がありました。

全国105校から174研究の応募があり、最終審査の対象となった13分野、30研究(個人10、チーム20)が選ばれ、文部科学大臣賞などの各賞に挑戦しました。“どんな着想から研究に入り、どこまで研究をし、この先どんな展開を考えているのか”そんなポイントで審査されたユニークな研究が受賞しました。

「なぜアサガオの花は朝に咲くのか」の解明、「絶滅危惧種のカスミサンショウウオが、どこに生息しているのか」や「木の廃材を活用し、野生のツツジの花酵母からバイオエタノールを生産」、「こんにゃくから高機能シルクの創出」などユニークな研究成果が発表され、5月に国際学生科学技術フェアにも出場する研究もあり、発明や解明の瞬間に生れる感動は科学技術発展の第一歩です。我が社に訪れる高校生たちにも、そんな輝きがあります。

貼る太陽電池の誕生

震災による原発事故以来、自然エネルギーや再生可能なエネルギーを模索する研究が加速しています。太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスに始まり潮流、波力、浮力、海洋温度差発電等々、可能な限りの電力開発の研究が進んでいます。

理化学研究所と東京大学の研究チームが“衣服に貼れる太陽電池”を開発したと英科学誌ネイチャー・エナジーに発表しました。

原理は、有機化合物を極薄の高分子膜上に塗りつけて厚さがわずか3マイクロメートルの太陽電池を作成したとのこと。伸縮性があり曲げたり押しつぶしたりしても正常に作動するため洗濯もできる超薄型の太陽電池です。

シャツなどに貼り付け、血圧や体温を常に測定して病気を早期発見する医療器具や、衣服と一体化した薄型スマートフォンなどの電源に使えるし、ウエアラブル(身につけられる)機器の電源としても応用できると期待されています。

過酷な月面に挑戦する日本の技術

世界初の月面探査レースが米、グーグルがスポンサーでXプライズ財団が主催し、今年中に探査車を打ち上げ、月面で500m移動させ画像を最も早く地球に送ったチームが優勝するというレースです。

現在、5チームが参加するそうで日本からはHAKUTO(ハクト)チームが過酷な環境に耐えられる技術力を結集して、九州工業大学・超小型衛星試験センターで取り組んでいます。

月面は太陽光が当たる部分では100度、日陰では零下百数十度になるため様々な耐熱対策の試験が必要です。

探査車の名前は「SORATO」で、漢字では「宙(そら)兎(と)」、月の兎をイメージした名前です。

12月28日にインドのロケットに共同で打ち上げられ、1月末に月に着陸する予定だそうです。重さ4k、長さ58㎝、幅54㎝、高さ36㎝の小さな国産探査車に期待がかかります。

優勝賞金2000万ドル、23億円だそうですから、頑張ってほしいですね。

今年の「未来技術遺産」は。

2008年から始まった科学技術の歴史上重要な成果として保存する、重要科学技術史資料(未来技術遺産)が今年も15件登録されました。

1968年に発売され、ハイビジョンテレビが普及する先駆となったソニーのトリニトロンカラーテレビが登録されました。また、産業技術総合研究所と川田工業(現、カワダロボティクス)が、2003年に開発した二足歩行ができる人間型ロボット「HRP-2プロメテ」が人間と協働できるロボットの先駆けとなったとして登録されています。

1989年に登場した富士フイルムのカラーネガフィルム「フジカラーリアラ」が従来のフィルムに4つ目の層を導入した鮮明な色彩を再現したとして登録されたのですが、デジタル映像の今、30年一昔とはいえ“技術遺産”なのですね。今年ですでに240件が登録されたそうですが、こうした技術を基礎に新しい技術が誕生していくのですから、まさに“日進月歩”ですね。

オノマトペでロボット開発

オノマトペとはフランス語で、擬声語、擬音語、擬態語と訳されていますが、自然界の音や声、動きを音(おん)で象徴的に表した語です。

“ゆらゆら揺れる”や“クスクス笑う”や“シクシク泣く”などの表現で、日本語オノマトペ辞典には4.500語も記載されています。赤ちゃんが発する“ワンワン”や “アブアブ”などもオノマトペですが、こんな簡単な言葉を使って「生活支援ロボット」の研究開発が進められています。“ザラザラ”などの感触を表す言葉は、外国の赤ちゃんでも認識することができるのだそうです。マンガの世界では一歩先を行くオノマトペですが、世界共通の言語になるのでしょう。少子高齢化が進むなか、家での生活をサポートしたり簡単なコミュニケーションや赤ちゃんでも動かせるロボットの開発が進んでいます。

当社でも無声だった産業ロボットに音声を組み合わせ、誰でも認識できる作業の標準化や安全管理に力を入れています。

想い出の雨傘と技術革新

亜熱のような天候で突然の豪雨にあわててコンビニへ飛び込み500円のビニール傘に、お世話になっています。突風やゲリラ豪雨で、気が付くと傘の技術革新も進んでいます。

日本郵便が販売する“折れてもOKの傘”は骨のつなぎ目を工夫し特許構造で、たたんで開くと元通りになるのです。傘メーカーのサエラの傘は、風に強い構造が特徴ですべてのパーツが強度と弾力性に優れたプラスチック製で、風速32mの風でもしなやかに曲がって受け流し、風がやめば元の形に戻ります。

傘の技術革新の一方、売った傘は永久に保証しお直しする平塚の「こばり」店では親子二代が無料でお直しし、40年以上も修理して使っている常連客もあるそうです。

1964年、第14回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したフランスのミュージカル映画、「シェルブールの雨傘」を思い出しています。

せつない恋物語ですが、雨傘の夢と技術革新が妙に交叉します。

オニヒトデ駆除ロボット出陣!

地球温暖化は世界各地で様々な問題を提起していますが、科学の知恵を集結する時代なのかもしれません。温暖化が海水温を高め、サンゴ礁を食い荒らすオニヒトデが繁殖し白化現象の被害が広がり生態系が脅かされています。沖縄では年平均約10万匹のオニヒトデを駆除していますが、ダイバーが1匹ずつ駆除するのではとても間に合わずその上、捕まえる時や陸に揚げるときに猛毒のトゲに刺される事故も起きています。

豪州のクイーンズランド工科大学ではオニヒトデを退治する潜水ロボット「COTSBOT」コッツボットを開発しオニヒトデを自動検出し、致死量の胆汁酸を注射して駆除する実証試験を始め99%の制度でオニヒトデを検出し成果を出しているそうです。世界最大のサンゴ礁、グレートバリアリーフの減少の40%がオニヒトデが原因と言われていますから、オニヒトデ駆除ロボットの活躍が期待されています。

*COTSはオニヒトデの英名の略