理系高校生たちの情熱が、未来のモノづくりを担う

JSEC(ジェイセック)は、全国の高校生・高専生を対象に、2003年から始まった科学技術の自由研究コンテストです。
昨年12月、JSEC 2023が東京の日本科学未来館で開催され、全国174校の634人から、過去最多の343件の研究が応募されました。

上位入賞した研究作品は、2024年5月に米国・ロサンゼルスで開催される世界大会「国際学生科学技術フェア(ISEF)」に日本代表として挑みます。ISEFは、世界各国からファイナリストが集まり、研究成果を競い合う、まさに科学技術を志す理系高校生のオリンピックともいえる大会です。

研究作品は、「アミノ酸変異の解析から病気を予測」「エネルギーいらずの新しい冷却剤の開発」など、高校生たちの計り知れない好奇心と情熱によって成し遂げられた日本トップレベルの成果ばかりです。

学校での勉強は一般的に、与えられた内容を吸収することが中心であり、試験では、あらかじめ決まっている答えに至る力が試されます。
しかし、このような自由研究では、未知の世界に自ら飛び込み、さまざまな困難を経験し、地道に挑戦し続けなくてはなりません。

科学技術の進歩もまた、誰もやらない未知の領域へ挑戦し、情熱を持って地道に努力を続けることで、想像以上に未来の可能性を広げてくれると確信しております。

災害現場、人命救助を支える「レスキューロボット」

地震によるビルや家屋などの倒壊、豪雨による土砂災害などでは迅速な人命救助が求められる一方で、危険な現場への作業は二次災害の恐れがあります。そこで人が立ち入るには危険な現場での作業や調査を目的として開発されたのが「レスキューロボット」です。

1995年に発生した阪神・淡路大震災をきっかけとして、「一刻も早く人命救助に貢献するシステム」を開発するべく、日本及び世界各国でレスキューロボットの技術開発が進みました。
阪神・淡路大震災後は、人命探索のためのセンサーや遠隔操作のための通信技術の要素が備わり、16年後の東日本大震災では被害を受けた原子力発電所内部の放射線量の探査にもレスキューロボットが活用されています。

地球温暖化に起因した自然災害の増加、更に日本は予測不能な地震が起こりやすい国です。これらの自然災害をなくすことはできませんが、被害を小さく抑制できるよう、また、いち早く復旧できるよう、備えることは可能です。
世界有数のロボット大国である日本でもレスキューロボットの研究は日夜進んでいます。我が社も、ロボット技術の可能性を追求し、持続可能な未来に向けた研究の歩みを進めてまいります。

大阪万博2025で探る、未来社会構築のヒント

2025年の大阪・関西万博開催まで、500日を切りました。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに人類共通の課題解決に向けて、先端技術などの世界の英知を集めた新たなアイデアの創造と発信の場となることが期待されています。

以前のブログでも書きましたが、今回の万博で披露される予定の「空飛ぶ車」は、革新的な技術をもつ未来の交通手段として、熱い視線が注がれています。
空飛ぶ車は道路交通の枠にとらわれないスマートな移動の実現によって、移動時間を短縮し渋滞を緩和、災害や事故現場に柔軟に対応することができます。さらに電気自動車と同様に、二酸化炭素の排出量を削減するため環境への負荷が少ないことも注目です。

未来社会の構築には、地球環境を守りながら、私たちの生活をより便利にしていく必要があります。大阪万博2025では、未来に向けたデザインを展示しながら、人々の目をより持続可能な未来へと視線を向けさせ、地球と人々にとってより良い社会を築くヒントを多く探ることができるでしょう。

宇宙開発をリードする大田区蒲田の技術革新

NASAの月面開発プロジェクト「アルテミス計画」は、月などの有人探査を目指しており、この数十年で世界中で民間による宇宙開発が非常に進展してきました。

この「アルテミス計画」の一端で、大田区内の町工場で誕生した世界最小、最軽量の超小型月面探査車が、民間が開発した探査車として世界で初めて月面を走ることになります。
成功すれば、テレビドラマ「下町ロケット」の舞台となった、ものづくりの街に新たな歴史が刻まれるでしょう。

大田区・蒲田は世界に誇る技術を持ち、世界でも類稀な「ものづくりの達人が集まった町」です。宇宙開発という大きな夢を地元で実現しようとする姿勢は、地域の子供達にも新たな活力をもたらし、将来のものづくりに向けての希望を育むものとなります。

今後はAIの活用など様々な技術との融合で、宇宙開発の拡大が益々進んでいくことでしょう。
ロケットや人工衛星の精密機械など、宇宙・月面での技術開発で世界をリードする蒲田の技術にどうぞご期待ください。

AI時代だからこそ、感動する心を育てよう

科学技術振興機構(JST)は、市民や科学者、政策立案者などあらゆる立場の人が体験や対話を通じて未来社会のあり方を考える国内最大級のイベント「サイエンスアゴラ2023」を東京都で開催しました。ゲームを通じて子供達が科学技術への興味を深めるワークショップ、学びにつながる体験ブースなど、未来の創造力を育むステージとして多彩な企画が盛り込まれていました。
最新の科学技術や出展している人の情熱に触れながら、自分でつくること、そしてできあがった作品の原理や仕組みを学ぶことで科学の楽しさを体験し、感動する心が育ちます。

この感動体験が感性を豊かにし、想像力を湧き立て、先端技術の研究開発において重要な創造力を引き出せると思います。

日々進化するAIによって、瞬時に容易く、回答を示したり完成度の高い作品を生成する時代になってきましたが、「本質的な課題を見つけ出し解決策を導き出す力」という人間が本来もつ力が失われることが懸念されます。

今後、進化したAIを真に活かすには人の感性が重要であり、実体験からしか得られない感覚を身に付ける機会をより積極的に増やす必要が人にはあると思います。

高齢社会を豊かにする「ロボットテクノロジー」

日本の高齢者人口が増加し、2030年には1人の高齢者を1.8人が支える状況が予測されています。介護職の不足や医療費の増大など、高齢社会に伴う深刻な課題に対処するために、情報通信技術(ICT)とロボット技術の開発および導入が進展しています。

ICTとロボット技術は、在宅医療やリハビリテーションに非常に有用です。たとえば、患者の健康状態をリアルタイムで監視するためのセンサーやカメラを使用した在宅モニタリングシステム、患者の動きを支援し、分析および評価を行い、リハビリテーション計画を最適化するロボットリハビリテーション、認知症患者や社交の機会が限られる高齢者向けのコミュニケーションロボットなどが、介護者の負担軽減に役立っています。

ICTやデジタル技術の進化は、社会課題の解決への道を切り開く創造と革新に繋がっています。我が社も未来につながる新技術で、より活力ある社会づくりに貢献してまいります。

先端技術力の強化に取り組む。

科学技術の先端分野の競争力を高めようと国は「先端科学技術の戦略的な推進」「知の基盤と人材育成の強化」「イノベーション・エコシステム(生態系)の形成」の三本柱の基本戦略を掲げました。

AIの研究開発が進むなか、広く人材の育成を目指し若手研究者の支援やファンドによる支援などを計画しています。先端技術の形成では研究開発力の底上、国際競争に勝つためのグローバル戦略を推進するそうです。

産・官・民の総合的なイノベーション戦略が必要ですが、中小企業の優れた技術力の保全と共有が不可欠です。
蒲田のような特色のある地域産業の維持、継続が基盤だと思います。

先端技術の研究開発は、既存の技術をつなぐ環境づくりと総合的なイノベーション戦略の推進が必要です。我が社でも常に先端技術の研究開発を一体となって取り組んでいます。

AIが欠如する”身体的感性”

「AIで作った俳句は採用しません」と言う記事を読み、どうやって判断するのかと不思議に思いました。確かにAIで俳句は上手に作ることは出来るのでしょうが、それは作品の上手、下手ではなく作ったヒトの身体的な感性や選者の感性が選ぶことなのです。

“柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺”有名な正岡子規の句ですがAIで作れば簡単な句かもしれませんが子規は病弱で夏目漱石の下宿に50日程滞在し奈良に入る前日に詠んだ句です。見えない風景を体身から発する感性です。

身体を持たないAIには詠めない俳句です。梅干を見て酢っぱくなるのが身体の感性です。

科学技術はITやAIの技術とヒトの身体的感性の二人三脚で創られる技でなくてはならないと思っています。便利さを追及するのではなく、ヒトがいかに寄り添って技を研くかがこれからの研究開発の大切な視点だと考えています。

未来のノーベル賞を目指す「科学甲子園」

創業者・渡辺の出身地は岐阜県飛騨市ですが富山市から飛騨市、高山市の昔のサバ街道は今”ノーベル街道”と呼ばれています。

日本のノーベル賞受賞者28名の内、5名が富山から飛騨での化学・物理学・生物学・医学の研究領域での受賞者だからです。我が社の飛騨工場もこんな環境での精密機器の製造に取り組んでいますが、国の基礎研究の環境が減少し科学技術の未来が心配されています。

科学振興機構(JST)では2011年から”科学の甲子園”と称して高校生たちの科学に夢中する大会が開かれています。

今年で12回目を迎へた科学の甲子園は全国から668校、7870人が参加して、女子校も参加し理科、数学、情報の応用問題を解く筆記実技と実験や観察を行う実技試験に挑みました。国や企業が科学技術の視野を広げて基礎研究に取り組むことが豊かな暮らしへのスタートだと思っています。女性のノーベル賞受賞者は全体の5%で、日本は残念ながらゼロです。

“担い手不足”を救う科学技術

急速に進む少子高齢化社会で”人口減”が企業にとって大きな課題となっています。

世界が経験したことのないコロナ禍を機に、新しい社会のインフラの維持修繕、更新、多様化する災害への対応、ITと縁遠いイメージだった食品や運輸、流通やサービス業、高齢化社会に対応した介護や医療の”担い手”不足が深刻になっています。

製造業も担い手不足は同じで、労働生産性を自動化するためにロボットの活用が必要となっています。人間の横でAIロボットが一緒に実験したり、”きつい、汚い、危険”の3K現場で人間に変って働くロボットの活用が広がっています。

これからの人材は、付加価値の高い仕事に専念し技術力を高めることが求められます。

“人口減”を救う担い手としてロボットの領域は無限です。我が社もIT、AIを活用した創造性の高い技術力に挑戦しています。