科学と文学の間

1989年、アメリカの物理学者ハンス・デーメルトは「イオントラップ法」の開発でノーベル物理学賞を受賞しています。
電子は最初に発見された素粒子でそれ以上分割できない究極の単位と考えられている基本粒子で質量分析法や基礎物理研究、量子状態の制御など様々な科学的観測に用いられています。そうした電子を調べる上で画期的な業績を残しています。
デーメルトがノーベル賞講演で最後に語った一節は、イギリスの詩人、ウィリアム・ブレイクの詩「無垢の予兆」から“一粒の砂の中に世界を見る”を引用して“一個の電子に世界を見る”と締め括っています。
詩人、石川啄木の「一握の砂」は、無限の時間の内に刹那にも等しい時間を生きる人間を描いていて心に通じるものがあるように思います。科学の世界にも常に人の心に通じる原点があることを教えてくれます。