大田区の町工場が世界へ挑む「下町ボブスレー」

東京都大田区は、数多くの町工場が集積する「ものづくりのまち」として、日本の産業を長年支えてきました。その大田区から、世界最高峰の舞台を目指す壮大なプロジェクトが動き続けています。それが「下町ボブスレー」です。

ボブスレーは「氷上のF1」とも呼ばれ、そりで氷のコースを滑り、タイムを競う競技です。2011年より始まったこのプロジェクトは、区内の町工場が連携し、冬季オリンピックで使用される競技用そりを開発するというものでした。協力企業は延べ100社を超え、単独では受注が難しい高難度案件に、地域全体のネットワーク「仲間まわし」の精神で挑戦している点が大きな特徴です。

目指すは世界最高峰の舞台でしたが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。過去3回の大会では採用に至らず、それでも職人たちは諦めずに「いつか必ず、自分たちの技術で世界を驚かせたい」という一心で、何度も立ち上がったのです。

そして、この約15年にわたる挑戦が、ついに実を結ぼうとしています。2026年2月にイタリア・ミラノで開催される冬季オリンピックで、イタリア代表チームが下町ボブスレー3台を使用することが決定しました。

2026年の冬、銀世界を駆け抜けるその機体に、大田区の職人たちの魂が宿ります。下町ボブスレーは、大田区が誇る精密加工技術と、複数の企業が互いの強みを持ち寄る「仲間まわし」の精神が、世界と対等に渡り合えることを証明する挑戦なのです。

下町ボブスレーの物語は、私たち製造業に携わる全ての者に、未来への希望と勇気を与えてくれています。三信精機社も、彼らの挑戦に負けないよう日々の技術研鑽に励むと共に、冬のイタリアで輝く下町の誇りを、心から応援しています。