宇宙創生の日進月歩を観る

当社創業者、渡辺は岐阜県飛騨市出身ですが、飛騨市には奈良時代から採掘されてきた東洋一の広大な鉱山跡地を活用した東京大学宇宙線研究所があり、当社の飛騨工場もあります。
この鉱山跡地を活用して1,980年代から小柴昌俊博士が陽子崩壊の観測を始め初代カミオカンデが誕生し、1996年代から2代目スーパーカミオカンデでニュートリノの観測施設としてスタートし、2002年には小柴博士がノーベル物理学賞を受賞し2015年には梶田隆章博士が小柴博士に続いてニュートリノ素粒子の研究でノーベル物理学賞を受賞されました。
そして現在、3代目のハイパーカミオカンデが昨年着工し2027年の完成を目指しています。宇宙から飛来する素粒子ニュートリノが地下深い水槽を通り抜ける際に放つ微弱な光を捉え宇宙の成り立ちの解明を目指す研究を世界19カ国約450人からなる研究グループによって始まっています。科学の日進月歩を身近に感じながら我社も新しい時代に挑戦です。

宇宙から始まる農漁業の未来!

農漁業者の高齢化や後継者不足、放棄農地の拡大、国際的な漁業規制などで農漁業のIT化が進んでいます。
農業では個人から法人化や作物の工場化、農機のIT自動化で無人トラクターが畑を耕し、種まきや肥料の散布、作物の成熟度をチェックしたり、生育状況の情報を管理し刈り取りの順番を決めて収穫したりと衛星を活用した未来農業の試験が始まっています。
海洋漁業でも宇宙衛星を活用し、海面の観測データからプランクトンが豊富な海や海水温を赤外線で観測したりして、海面近くにいるサンマやカツオ、イワシ、アジなどの漁場を探したり、魚の群れを宇宙衛星から探して漁船に伝えたりする研究開発が進んでいます。
漁業情報サービスセンターでは、水深数百メートルを泳ぐメバチマグロやアカイカがいる場所を漁船に知らせるサービスを始めたそうです。農漁業の近代化は宇宙衛星の活用から始まっています。

身近になった“消毒ロボ”で感じること

コロナ禍の拡大で異例の早さでワクチンが導入され益々医科学技術への期待が多岐にわたって広がっています。
私たちの身近なところでは、“新型ウイルス撃退ロボット”が大活躍で様々な広がりをみせています。空港やホテル、劇場や競技場、博物館や学校、百貨店から居酒屋まで様々な施設に今やこの消毒ゲートを通らなければ入れないのと入って思わぬ所にウイルス撃退ロボットが導入されていることに驚きます。
触らない形式を目指して扉の開閉や室内の点灯、トイレの洗浄は全自動に、競技場では入場時は顔認証や電子チケット、選手控室やロッカールーム、練習会場での消毒はオリンピックを前に実験が始まっています。
すでに体温測定や消毒はロボットの前に立ち手を出すだけで音声判定が日常となっているのを体験すると科学の日進月歩を感じます。
感染症という医療の一翼を“技術”で私たちが支えていると思うと身が締る思いです。

2億年先を目指す科学者たち

経験したことのないコロナ感染の時間で科学はどんな新しい発明や発見、技術を創出してくれるのでしょうか、科学の発展には常に“新しい発想”の視点があるものです。
生物進化の専門家たちが2億年後の進化を予想し“巨大なダイオウイカが像のような怪物となって陸上に進出する”と発表しています。
陸上で暮らすすべての動物が海生生物の子孫だということからの発想です。日本でもイカが三角部分のひれと腕と腕の間の膜を翼のように広げて水をジェットエンジンのように噴射しながら30メートル程飛行することが観察されており、やがて鳥のように空を飛ぶように進化するのではと想像しています。
イギリスの原子核物理などの発展に功績を残したラザフォードはウランとトリウムが放射線を出しながら別の元素に変換が可能であると説き新しい錬金術だと発表しています。私たちも、困難な時代の中で常に新しい視点で技術革新に全集中してまいります。

旅する技術の結晶「はやぶさ2」

初代「はやぶさ」の開発が7年かかりましたが「はやぶさ2」は3年半で終えて14年12月に打ち上げられ、6年50億キロの旅を経て小惑星リュウグウから帰ってきました。初代が欧州の夜空で燃え尽きたのと違い、リュウグウからの貴重な試料を入れたカプセルを切り離し次のミッションである地球と火星の間を回る小惑星「1998KY26」に向かって旅だち、2031年7月に到着するそうですから驚きです。
「リュウグウ」は、太陽系が誕生したころの姿を保った小惑星でその砂やガスを採取して生命の材料が宇宙から来たのではないかという謎に迫っています。世界が認める探査機「はやぶさ2」は、特殊なチタン合金のボルトやカプセル分離スプリング、落下したカプセル探査のためのレーダー、クレターを作る衝突装置、燃料となるキセインガスの開発など多くの中小企業の優れた技術を取り組んで作られた日本の科学技術の結晶です。はやぶさの旅路は科学の日進月歩のドラマですね。

“誰もやらない実験”への挑戦

当社の飛騨工場のある飛騨市に世界最大の地下ニュートリノ観測装置のある「スーパーカミオカンデ」は2002年にノーベル物理学賞を受賞された小柴昌俊さんが40年以上前に神岡鉱山の地下を活用して、16万光年先から届いた超新星の素粒子ニュートリノ信号をとらえる巨大な水槽を作り“誰もやらない新しい実験”を提案し取り組みました。
昨年11月に94歳で亡くなられましたがニュートリノ天文学という新分野を切り開き、日本の科学界に多くの遺産を残し、2015年には梶田隆章さんが小柴さんに続いてノーベル物理学賞を受賞されました。
現在、観測規模を約5倍にした「スーパーカミオカンデ」の建設が始まっていますので三人目のノーベル賞も期待されています。
科学技術の進歩は、誰もやらないことへの情熱から始まり“日進月歩”の時間で引き継がれていくのですね。当社も次の50年に向かって科学技術の発展に貢献してまいります。

研究開発の “宝探し”

IotやAIの急速な進化とともに科学技術の世界は従来の研究者に加え新しい異分野の人材が求められています。

夏には「扇風機」が身近な家電で、ネーミング通り羽で起こす風が商品でしたが、ダイソン社の羽のない扇風機が登場してイメージが一新しましたし、掃除機もお掃除ロボが登場して“掃除は自分でしない”作業に変身しました。研究開発の世界にデザイナーが参加して技術の将来像を形にしてみせるプロトタイプの製作者が新たな価値創造を生み出しています。また、シオカラトンボの背中にある紫外線を反射させる成分から油に近いワックスのようなものを発見し“日焼け止め”を研究したり、蚊の嗅覚器からセンサーを開発し、人の汗のにおいから感情を読み取りと幅広い研究が進められています。研究開発に異分野の研究者とタッグして“宝探し”をするトレジャーハンティング人材が参加しています。創業50周年、次のアフターコロナに挑戦します。

デジタルシフト社会の技術連携

新型コロナウイルスの拡散で緊急時の対応としてデジタルシフト社会の整備が急がれていますが、AIやIoTを活用した領域でもコンソーシアムの流れが加速しています。
視覚障害のある人が一人で自由に街を歩けるようにしようと“移動支援ロボット”を共同開発しようと研究が進められています。
IBMがAI技術を担当しオムロンが画像認識センサー技術、アルプスアルパインが触覚技術、清水建設が測位ナビゲーション技術、三菱自動車が自動車の技術を5社で提供し、3年間で実用化に向けスタートしました。
従来の杖に換わりキャリーバッグ型のケースに様々なセンサーや知能を搭載し安全に移動できる案内ロボットを目指しています。
今やビジネスの出張や旅に欠かせないキャリーバッグですが同様に目の不自由な人の移動支援ロボとして誕生します。企業の得意技術と連携したコンソーシアム型技術開発がデジタルシフト社会の一翼を担うでしょう。

踏み出す勇気の“科学技術”

私たちの技術開発には「少しの変化」が社会の「大きな変化」につながるという視点があります。IoT(モノのインターネット接続)、AI(人工知能)が科学技術の進展に飛躍的な役割を担っています。高齢化が進むなか、歩けない高齢者や障がい者に車いすが欠かせませんが、一方で500メートルを超えて歩くことが困難な65歳以上のお年寄りが1千万人以上いるとされ、家にこもりがちな方々を外に出し生活の前向きな参加を支援する「生活電動車椅子」の開発が進んでいます。羽田空港でこの車いすの実証実験が行われ、利用者が下りた後、自動運転技術を搭載した車いすが勝手に所定の位置に戻る技術が大変話題になりました。
これまでのバリアフリーは“マイナスからゼロ”に近づける発想でしたが、これからは“ゼロからプラス”に持っていく技術が求められる時代です。
新たな科学技術との共生社会へ“踏み出す勇気”を培ってまいります。

農業に進出するロボットたち

日本の農業人口が昭和25年をピークに減少しています。平成12年389万人でしたが、平成30年では175万人と半減しています。農業は休みのない重労働で後継者も減り人手不足に加えて高齢化が進み、機械化も遅れ農業を取り巻く環境が厳しいのが現実です。こうしたきつい労働を救うために「自動野菜収穫ロボット」が話題です。身をかがめながらの仕事が多い農作業は足腰に負担がかかりますが、全長1mほどのコンパクトなロボットで自走しながら収穫適期の野菜を見極め、成長が一律でない野菜を選別して繊細な動きで摘み取りカゴに入れるという優れもので、AI(人工知能)を搭載したロボットです。
IoT商品はともすると高価になりますが、必要な物に必要な時間だけ借りるリース制度で運用され、農家にとっては有難いサービス制度です。IoT化はこうした社会的に価値のあるシステムで定着していくよう努力してまいる所存です。