アフターコロナの新しい蒲田の希望

中小企業の街・蒲田は昭和58年がピークで、9,200社程でしたが平成28年には4,200社と半減し今も減り続けています。経営者や専門技術者の高齢化や事業継承者の不足が原因です。1人から9人規模の会社が90%を占める企業特性も少子高齢社会で難しい経営環境となっています。それでも、職住一体、共同作業や専門技術の集積地としての歴史は大きな遺産で世界の窓口になる羽田は市場や技術のグローバル化に向けて立地を活かした新しい産業の発信が始まっています。
ITやAIを活かした産業は蒲田の企業風土を生かせる場として若い世代の参入により変化しています。働き方改革やモノからコトへの価値観の変化によりアフターコロナの時代を先取りした産業振興も進んでいます。
我社も次の半世紀に向けて“成長とは変化”とコト価値づくりに挑戦してまいります。作家、村上龍は「この国は何でもある。だが希望だけがない」と。“希望”を持って進みます。

ロボットの道草

精密機器にAI(人工知能)が組み込まれ限りなくロボットが発達していますが、ロボットの語源はチェコ語のロボタ(強制労働)だそうですから意味深長ですね。
今、世界で「ヒト型ロボット」が開発され、手塚治虫のマンガ「鉄腕アトム」の夢の世界を彷彿させてくれます。
身長173cm、体重57kgと言われる“?”と思いながら「ヒト型ロボット」を受け入れます。人間そっくりのロボットの開発は、人に変わって危険な作業や退屈な仕事をさせるそうです。すでに洗濯機や掃除ロボットは活躍していますが家事の手伝いや買物をしたりするのだそうですから“アトム”の時代です。
大手電気自動車メーカーや宇宙ロケット開発メーカーが手がけているそうですから最先端の技術を活用しての開発は“科学の道草”のように思えますが寄り道は技術を深くする科学に大切な日進月歩なのではないでしょうか。

科学と文学の間

1989年、アメリカの物理学者ハンス・デーメルトは「イオントラップ法」の開発でノーベル物理学賞を受賞しています。
電子は最初に発見された素粒子でそれ以上分割できない究極の単位と考えられている基本粒子で質量分析法や基礎物理研究、量子状態の制御など様々な科学的観測に用いられています。そうした電子を調べる上で画期的な業績を残しています。
デーメルトがノーベル賞講演で最後に語った一節は、イギリスの詩人、ウィリアム・ブレイクの詩「無垢の予兆」から“一粒の砂の中に世界を見る”を引用して“一個の電子に世界を見る”と締め括っています。
詩人、石川啄木の「一握の砂」は、無限の時間の内に刹那にも等しい時間を生きる人間を描いていて心に通じるものがあるように思います。科学の世界にも常に人の心に通じる原点があることを教えてくれます。

宇宙創生の日進月歩を観る

当社創業者、渡辺は岐阜県飛騨市出身ですが、飛騨市には奈良時代から採掘されてきた東洋一の広大な鉱山跡地を活用した東京大学宇宙線研究所があり、当社の飛騨工場もあります。
この鉱山跡地を活用して1,980年代から小柴昌俊博士が陽子崩壊の観測を始め初代カミオカンデが誕生し、1996年代から2代目スーパーカミオカンデでニュートリノの観測施設としてスタートし、2002年には小柴博士がノーベル物理学賞を受賞し2015年には梶田隆章博士が小柴博士に続いてニュートリノ素粒子の研究でノーベル物理学賞を受賞されました。
そして現在、3代目のハイパーカミオカンデが昨年着工し2027年の完成を目指しています。宇宙から飛来する素粒子ニュートリノが地下深い水槽を通り抜ける際に放つ微弱な光を捉え宇宙の成り立ちの解明を目指す研究を世界19カ国約450人からなる研究グループによって始まっています。科学の日進月歩を身近に感じながら我社も新しい時代に挑戦です。

コロナ戦争の中の技術革新

コロナ戦争が始まって1年が過ぎましたがワクチン接種で沈静化に向かうのでしょうか。
マスクが必需品になり化粧品業界も我慢の時間でしたが終息に向かう中国では、早くもネットで日本から化粧品購入が爆買とか、市場回復の兆しもあるようです。
大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」で坂本龍一さんが化粧をして話題になりましたが戦争への抵抗でしょうか。C社のラジオCMで「戦争と口紅」も戦時下の中でも口紅を指す反戦への意志もあるのだと知りました。
マスクにつかない口紅やファンデーション、肌荒れや蒸れない繊維と細やかな技術革新が進むのも危機への対応です。
化粧品機器のシェアの高い当社も、充填技術を応用した食品産業や建築業、文具や製菓と幅広い領域への参加が進んでいます。
難しいことですが危機をチャンスに変革する取り組みこそ科学技術の“日進月歩”だと改めて感じています。

「退化」と「変化」は「進化」の基本

人類はネアンデルタール人からホモ・サピエンス、そして現代人が誕生しましたがネアンデルタール人は2万8千年前に忽然と姿を消したといわれていますが、ドイツのマックス・ブランク研究所の調査では現代人の遺伝子の1~4%はネアンデルタール人に由来するDNAを引き継いでいると発表しています。長い進化の中で猿人が二足歩行をするようになって不要な尾が消え、道具を使うようになったことで歯で噛み切ることが少なくなり犬歯が小さくなり不要な機能を退化させ人類へと進化したように、生活の変化が「進化」を促進しました。
コロナ禍でマスクの着用が化粧品に変化を迫り、マスクが新ファッションになり、働き方もテレワークで変化しています。企業や商業の業態も大きく変化しています。当社も精密機械の分野が益々広がっています。人類の退化が進化したように、社会の変化が科学技術の進化を加速させていることは間違いありません。その波に挑戦してまいります。

宇宙から始まる農漁業の未来!

農漁業者の高齢化や後継者不足、放棄農地の拡大、国際的な漁業規制などで農漁業のIT化が進んでいます。
農業では個人から法人化や作物の工場化、農機のIT自動化で無人トラクターが畑を耕し、種まきや肥料の散布、作物の成熟度をチェックしたり、生育状況の情報を管理し刈り取りの順番を決めて収穫したりと衛星を活用した未来農業の試験が始まっています。
海洋漁業でも宇宙衛星を活用し、海面の観測データからプランクトンが豊富な海や海水温を赤外線で観測したりして、海面近くにいるサンマやカツオ、イワシ、アジなどの漁場を探したり、魚の群れを宇宙衛星から探して漁船に伝えたりする研究開発が進んでいます。
漁業情報サービスセンターでは、水深数百メートルを泳ぐメバチマグロやアカイカがいる場所を漁船に知らせるサービスを始めたそうです。農漁業の近代化は宇宙衛星の活用から始まっています。

身近になった“消毒ロボ”で感じること

コロナ禍の拡大で異例の早さでワクチンが導入され益々医科学技術への期待が多岐にわたって広がっています。
私たちの身近なところでは、“新型ウイルス撃退ロボット”が大活躍で様々な広がりをみせています。空港やホテル、劇場や競技場、博物館や学校、百貨店から居酒屋まで様々な施設に今やこの消毒ゲートを通らなければ入れないのと入って思わぬ所にウイルス撃退ロボットが導入されていることに驚きます。
触らない形式を目指して扉の開閉や室内の点灯、トイレの洗浄は全自動に、競技場では入場時は顔認証や電子チケット、選手控室やロッカールーム、練習会場での消毒はオリンピックを前に実験が始まっています。
すでに体温測定や消毒はロボットの前に立ち手を出すだけで音声判定が日常となっているのを体験すると科学の日進月歩を感じます。
感染症という医療の一翼を“技術”で私たちが支えていると思うと身が締る思いです。

2億年先を目指す科学者たち

経験したことのないコロナ感染の時間で科学はどんな新しい発明や発見、技術を創出してくれるのでしょうか、科学の発展には常に“新しい発想”の視点があるものです。
生物進化の専門家たちが2億年後の進化を予想し“巨大なダイオウイカが像のような怪物となって陸上に進出する”と発表しています。
陸上で暮らすすべての動物が海生生物の子孫だということからの発想です。日本でもイカが三角部分のひれと腕と腕の間の膜を翼のように広げて水をジェットエンジンのように噴射しながら30メートル程飛行することが観察されており、やがて鳥のように空を飛ぶように進化するのではと想像しています。
イギリスの原子核物理などの発展に功績を残したラザフォードはウランとトリウムが放射線を出しながら別の元素に変換が可能であると説き新しい錬金術だと発表しています。私たちも、困難な時代の中で常に新しい視点で技術革新に全集中してまいります。

旅する技術の結晶「はやぶさ2」

初代「はやぶさ」の開発が7年かかりましたが「はやぶさ2」は3年半で終えて14年12月に打ち上げられ、6年50億キロの旅を経て小惑星リュウグウから帰ってきました。初代が欧州の夜空で燃え尽きたのと違い、リュウグウからの貴重な試料を入れたカプセルを切り離し次のミッションである地球と火星の間を回る小惑星「1998KY26」に向かって旅だち、2031年7月に到着するそうですから驚きです。
「リュウグウ」は、太陽系が誕生したころの姿を保った小惑星でその砂やガスを採取して生命の材料が宇宙から来たのではないかという謎に迫っています。世界が認める探査機「はやぶさ2」は、特殊なチタン合金のボルトやカプセル分離スプリング、落下したカプセル探査のためのレーダー、クレターを作る衝突装置、燃料となるキセインガスの開発など多くの中小企業の優れた技術を取り組んで作られた日本の科学技術の結晶です。はやぶさの旅路は科学の日進月歩のドラマですね。