海の豊かさをつなぐ「水中ロボット」

7月に入り、海や川などへレジャーに行く楽しい季節となってきました。日本の海は豊かな海洋環境に恵まれ、多種多様な水産物が獲れることで知られています。これらの水産物は、多くの日本人の食卓を彩り、優れた栄養特性を持っています。

しかし、日本の水産資源は年々減少の一途をたどっており、その持続可能な利用が課題となっています。SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」にもあるように、乱獲や環境汚染の影響で日本だけでなく世界的に水産資源の枯渇が深刻化しています。

この課題を解決するために期待されているのが水中ロボットです。水中ロボットとは、人が到達できない海中や海底で、海洋資源の調査やモニタリング、漁業のサポートなど、多岐にわたる役割を果たしています。

養殖場では、水中ロボットが餌やり、成長した魚の特定水域への誘導、密猟者の監視、ごみや死魚の回収など、さまざまな作業を行います。また、近年は省エネルギー浮力制御システムや新しいエネルギー源から電力を供給する技術が開発されています。これらの進展は、効率的な資源管理と持続可能な漁業に大きく貢献しています。

今後も技術革新と共に、その性能と活用範囲は広がり、海と私たちの食卓を守る強力なパートナーとなることでしょう。水中ロボットの進展に注目です。

AI/XR技術が拓く、共生社会の未来

XR(クロスリアリティ)とは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などの「仮想世界」技術の総称です。ゲーム産業の技術としてよく知られているXRですが、近年は障害者の支援ツール開発に活用されるようになりました。

XR技術を施した「スマートグラス」は、視覚障害のある方に映像処理を行い、障害物などの危険を認識できるようサポートします。
また、聴覚障害のある方には、AIテクノロジーと融合したツールで周囲の情報を字幕で見せるなど、頼もしいガイド役として活躍します。

障害の有無に関わらず互いを尊重し、支え合いながら共生する社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念に基づき、障害者の自立と社会参加の促進が求められています。
その課題解決に向け期待されているのが、近年、目まぐるしい進化をし続けているAI、XRといった最先端テクノロジーの力です。

私たち三信精機も様々な技術動向に注目しながら、テクノロジーを活用した先端技術で、未来を創造していく挑戦を続けていく所存です。

「スマート農業」がもたらす日本農業の新時代

「スマート農業」という言葉を聞いたことがありますか?これは、AIやIoTなどの最新技術を駆使して農業を革新する新たな取り組みです。私たちの日常生活でもスマートフォンやスマート家電が身近になりましたが、農業においてもスマート化が進んでいます。

現在、日本の農業は労働力不足という課題に直面しており、農業従事者の数は今後20年間でおよそ4分の1にまで減少すると見込まれています。
農林水産省は、労働力を確保し、食料の供給体制を維持するため、ドローンやAIなどを用いたスマート農業の普及を加速しようとしています。

スマート農業の活用事例としては、ロボットトラクターでの耕起作業の自動化、リンゴやナシの自動収穫ロボット、AI画像解析での生育診断、病害予測できるモニタリングサービスなどがあります。

今後は、スマート農業が日本の農業を強く、持続可能なものへと革新させる鍵となるでしょう。精密機器の開発を担う三信精機も、新しい時代に応える先進的なものづくりで、課題の解決に取り組んでまいります。

災害現場、人命救助を支える「レスキューロボット」

地震によるビルや家屋などの倒壊、豪雨による土砂災害などでは迅速な人命救助が求められる一方で、危険な現場への作業は二次災害の恐れがあります。そこで人が立ち入るには危険な現場での作業や調査を目的として開発されたのが「レスキューロボット」です。

1995年に発生した阪神・淡路大震災をきっかけとして、「一刻も早く人命救助に貢献するシステム」を開発するべく、日本及び世界各国でレスキューロボットの技術開発が進みました。
阪神・淡路大震災後は、人命探索のためのセンサーや遠隔操作のための通信技術の要素が備わり、16年後の東日本大震災では被害を受けた原子力発電所内部の放射線量の探査にもレスキューロボットが活用されています。

地球温暖化に起因した自然災害の増加、更に日本は予測不能な地震が起こりやすい国です。これらの自然災害をなくすことはできませんが、被害を小さく抑制できるよう、また、いち早く復旧できるよう、備えることは可能です。
世界有数のロボット大国である日本でもレスキューロボットの研究は日夜進んでいます。我が社も、ロボット技術の可能性を追求し、持続可能な未来に向けた研究の歩みを進めてまいります。

高齢社会を豊かにする「ロボットテクノロジー」

日本の高齢者人口が増加し、2030年には1人の高齢者を1.8人が支える状況が予測されています。介護職の不足や医療費の増大など、高齢社会に伴う深刻な課題に対処するために、情報通信技術(ICT)とロボット技術の開発および導入が進展しています。

ICTとロボット技術は、在宅医療やリハビリテーションに非常に有用です。たとえば、患者の健康状態をリアルタイムで監視するためのセンサーやカメラを使用した在宅モニタリングシステム、患者の動きを支援し、分析および評価を行い、リハビリテーション計画を最適化するロボットリハビリテーション、認知症患者や社交の機会が限られる高齢者向けのコミュニケーションロボットなどが、介護者の負担軽減に役立っています。

ICTやデジタル技術の進化は、社会課題の解決への道を切り開く創造と革新に繋がっています。我が社も未来につながる新技術で、より活力ある社会づくりに貢献してまいります。

先端技術力の強化に取り組む。

科学技術の先端分野の競争力を高めようと国は「先端科学技術の戦略的な推進」「知の基盤と人材育成の強化」「イノベーション・エコシステム(生態系)の形成」の三本柱の基本戦略を掲げました。

AIの研究開発が進むなか、広く人材の育成を目指し若手研究者の支援やファンドによる支援などを計画しています。先端技術の形成では研究開発力の底上、国際競争に勝つためのグローバル戦略を推進するそうです。

産・官・民の総合的なイノベーション戦略が必要ですが、中小企業の優れた技術力の保全と共有が不可欠です。
蒲田のような特色のある地域産業の維持、継続が基盤だと思います。

先端技術の研究開発は、既存の技術をつなぐ環境づくりと総合的なイノベーション戦略の推進が必要です。我が社でも常に先端技術の研究開発を一体となって取り組んでいます。

AIが欠如する”身体的感性”

「AIで作った俳句は採用しません」と言う記事を読み、どうやって判断するのかと不思議に思いました。確かにAIで俳句は上手に作ることは出来るのでしょうが、それは作品の上手、下手ではなく作ったヒトの身体的な感性や選者の感性が選ぶことなのです。

“柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺”有名な正岡子規の句ですがAIで作れば簡単な句かもしれませんが子規は病弱で夏目漱石の下宿に50日程滞在し奈良に入る前日に詠んだ句です。見えない風景を体身から発する感性です。

身体を持たないAIには詠めない俳句です。梅干を見て酢っぱくなるのが身体の感性です。

科学技術はITやAIの技術とヒトの身体的感性の二人三脚で創られる技でなくてはならないと思っています。便利さを追及するのではなく、ヒトがいかに寄り添って技を研くかがこれからの研究開発の大切な視点だと考えています。

未来のノーベル賞を目指す「科学甲子園」

創業者・渡辺の出身地は岐阜県飛騨市ですが富山市から飛騨市、高山市の昔のサバ街道は今”ノーベル街道”と呼ばれています。

日本のノーベル賞受賞者28名の内、5名が富山から飛騨での化学・物理学・生物学・医学の研究領域での受賞者だからです。我が社の飛騨工場もこんな環境での精密機器の製造に取り組んでいますが、国の基礎研究の環境が減少し科学技術の未来が心配されています。

科学振興機構(JST)では2011年から”科学の甲子園”と称して高校生たちの科学に夢中する大会が開かれています。

今年で12回目を迎へた科学の甲子園は全国から668校、7870人が参加して、女子校も参加し理科、数学、情報の応用問題を解く筆記実技と実験や観察を行う実技試験に挑みました。国や企業が科学技術の視野を広げて基礎研究に取り組むことが豊かな暮らしへのスタートだと思っています。女性のノーベル賞受賞者は全体の5%で、日本は残念ながらゼロです。

“担い手不足”を救う科学技術

急速に進む少子高齢化社会で”人口減”が企業にとって大きな課題となっています。

世界が経験したことのないコロナ禍を機に、新しい社会のインフラの維持修繕、更新、多様化する災害への対応、ITと縁遠いイメージだった食品や運輸、流通やサービス業、高齢化社会に対応した介護や医療の”担い手”不足が深刻になっています。

製造業も担い手不足は同じで、労働生産性を自動化するためにロボットの活用が必要となっています。人間の横でAIロボットが一緒に実験したり、”きつい、汚い、危険”の3K現場で人間に変って働くロボットの活用が広がっています。

これからの人材は、付加価値の高い仕事に専念し技術力を高めることが求められます。

“人口減”を救う担い手としてロボットの領域は無限です。我が社もIT、AIを活用した創造性の高い技術力に挑戦しています。

科学技術の未来を”見える化”する万博

1970年、岡本太郎の太陽の塔に象徴された大阪万博が55年後の2025年4月に大阪で開催されます。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、社会課題を解決するような新しい技術やサービスを実用化し”そこにしかない”未来技術を先取りしてくれるそうです。

先の万博で人気の「人間洗濯機」は、自動でお湯を張り超音波で体を洗うお風呂がまだ銭湯通いの時代でしたが今や日常です。今度の万博の「未来人間洗濯機」は浴槽に座わるとセンサーが自脈動をとりストレスの度合いを測り、ストレスを和らげるための水流に揺らぎをつけたり、映像や音を流し体を洗うだけでなく”心を洗う”がテーマです。

目玉は「空飛ぶ車」で、人を乗せて不便な山間地や都市部の渋滞を自由に飛び、災害時の緊急輸送など夢の空飛ぶ車です。科学は常に日進月歩ですがマンガが一歩先に科学技術の見える化を描き、万博がその実現化を更に近づけてくれそうです。